無期転換後の解雇
有期雇用契約の無期転換にともない解雇の規定についてどのように変わるか紹介します。
まずは、正社員(無期雇用契約)の解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を欠く解雇は権利濫用として無効とされています。
経営上の理由による整理解雇にも過去の裁判の積み重ねによって、4つの要素(要件)から整理解雇の正当性が判断される傾向にあります。
1.人員削減の手段として整理解雇をすることの必要性
2.解雇回避努力を尽くしたと認められること
3.解雇対象者の選定の妥当性
4.解雇手続きの妥当性
一方、有期雇用契約の解雇には「やむ得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」
その「やむ得ない自由」とは正社員を解雇する場合の要件よりも厳しく、天災事変のように、よほどの事情がない限り認められません。
有期雇用契約は、雇用期間が定められているので当該期間を経過すると雇用契約が終了するため労働者保護が強くなっています。そのため有期雇用契約は、正社員に比べ解雇するのが難しいです。
このように解雇規定だけを比較すると無期雇用契約と有期雇用契約では有期雇用契約を締結しているもののほうが解雇しづらいのがわかります。
さて、有期雇用契約が無期転換を申し込んだ際にこの規定はどちらの規定に当てはまるようになるのか?
答えは
無期転換は有期雇用契約を無期雇用契約に転換する制度であり、正社員(無期雇用契約)にする制度ではないです。
よって、契約期間以外の労働条件は「別段の定め」を設けないのであれば、有期雇用契約と同じものになります。
つまり解雇規定は
やむ得ない事由がなければ解雇できない。
です。
これをまとめて感じたことなのですが、解雇の規定だけをみると有期雇用契約の労働条件を無期雇用に引き継ぐのが有利だと考えてしまいます。
労働の安定という面ではそれでもいいと思います。
が、無期転換ということは長期にわたりその事業所で契約期間以外は有期雇用の労働条件で働くとなると賃金、賞与、待遇などさまざまな点で不利に感じてしまう恐れがあります。
多くの事業所は無期転換に向けて契約期間以外の労働条件について「別段の定め」を盛り込んできていると思います。
ご自身の事業所はどういった労働契約になるのか。その労働契約が自分のライフワークにあっているのか。
しっかりと検討して申し込みをするようにしてください。
※無期転換については平成25年4月1日施行。5年以上の継続雇用。が原則要件となっているため平成30年4月から本格的に無期転換労働者が現れます。